2.倒木更新
 屋久杉の森には樹齢数千年の老樹だけではなく、生まれたばかりの幼樹もみられ、世代交代がくりかえされて生きている森である。スギは光を好む植物で、暗い森の中では巨木が倒れて光り溢れる空間ができたときに若い屋久杉が育つチャンスがある。とくに光があたりやすい倒木の上に着生樹として育ち始める屋久杉が多く、倒木更新と呼ばれている。

3.切り株更新
 倒木更新と同じ原理だが、伐採した跡の切り株の上に後継樹が再生したもので、屋久杉を伐採するようになってからの現象として普通にみられる。

4.試し切り
 森林軌道や林道がつくられる以前は、屋久杉は、伐採した場所で加工されて人々が背負って里に下ろした。屋久杉の加工は杉材の特性を生かした刃物による手割りによったので素性のよい柾目の屋久杉が良いとされた。材の良し悪しを判断するためにおこなわれたのが試し切りで、残された屋久杉や放棄された残材にその跡を見ることができる。

5.屋久杉の土埋木
 屋久杉の森を散策すると巨木の森のそこかしこに苔に覆われ草木の生い茂った古い切株が乱立しているが、これらの切株や捨てられた倒木は直射日光を遮られ低温で多湿な天然の保冷倉庫ともいうべき原生林の理想的な自然環境に守られ、表面が腐っても樹脂分の多い内部は朽ちることなく時の流れによって紋理妖しい材質を色合いも美しく熟成させながら遺された。これが屋久杉の「土埋木」である。

屋久杉を知る手がかりとして

1.屋久杉
 日本の杉は分類上の名称としてはすべてスギである。したがって屋久杉という名前は一般的な呼び名であり厳密な定義であるわけではない。普通に考えて屋久島に育つ天然性のスギの総称といえるようだ。屋久島でも人里近くに見られるスギは植林されたもので、天然杉は標高五百メートル以上、山頂近くまで見ることができる。地元では屋久杉の中でも樹齢千年以上の老樹をとくに屋久杉、樹齢百年の若い杉を小杉、あるいは屋久小杉と呼んで区別している。樹齢千年以上といわれる老樹は倒木や表土崩壊など自然の要因によって更新誕生したものだが、小杉と呼ばれる若い杉の多くは古い時代の択伐の跡地に再生したものである。このような更新の契機の違いによって両者は材質、とくに木目の緻密さに大きな差異がある。屋久杉と小杉「あるいは屋久小杉」の呼び名の区別は利用面における価値の違いによって生じたといえるようだ。今回の調査対象でも形態上の特徴ゆえに親しまれているものには、いわゆる小杉が含まれている。